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第七十九話:赤い部屋

解説:タクシーの運転手が夜道を走らせていたところ、一人の女性が道端で手を挙げていた。
(こんな夜中に、まさか幽霊じゃないか)
運転手はそう思いながらも、もし人間だったとしたら気の毒なので、女性を乗せてやることにした。女性は一言、
「××までお願いします」
と言ったきり、終始無言だった。運転手はただ黙々と運転をするしかなかった。

そうこうしているうちに、ようやく目的地に到着した。
「お客さん、着きましたよ」
すると、女性は、
「この先にある私の家まで、お金を取りに行ってきます」
と言って歩き出した。このまま逃げられても困ると思い、運転手も一緒についていくことにした。女性の家は山の上にあり、その為タクシーが入っていけなかったのである。二人がしばらく歩くと、立派な家に行き当たった。
「ここが私の家です。今お金を取って参ります」
女性はドアの中に消えていった。運転手は玄関で待つことにした。
ところがいつまで待っても女性は出てこない。まさかこのまま出てこないのでは、と心配した運転手は、ドアの覗き穴から中の様子を窺った。

そこは一面真っ赤だった。まさに赤い部屋とも言うべきだった。

「変わった趣味の人だ。部屋の中が一面真っ赤だなんて」
運転手はもう暫く待つことにした。すると、ようやく彼女は出てきた。
「遅くなって申し訳ありません。では、これでお願いします」
料金を受け取った運転手は、山を降りるとすぐさまタクシーを走らせた。


翌日、運転手は同僚と話しているうちに、自然と話題が昨夜の女性の話になった。
「昨日の夜、俺変わった女を乗せたんだぜ。何せ家の中が赤一色なんだ」
「ああ、それって山の家に住んでる女の人じゃねえか。俺も数回乗せたことがあってよぉ。それより」
「それより?」
「あの人変わったところなかったか?」
「さて、部屋が赤いということ以外は別に・・・」
「いや、部屋だけじゃねえって。あの女、目が兎のように真っ赤だったろう」
「目・・・真っ赤・・・・・・まさか!!」
運転手は気付いた。実は部屋が真っ赤に見えたのは、女性も家の中から運転手のことを見ていたからだったのである。

運転手の見た「赤い部屋」とは、女の目だった。


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