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第七十七話:人面犬

解説:その名のとおり、人の顔をした犬の妖怪。
夕方から夜にかけて現れる。路地裏や公園、そして墓地や神社など、様々なところに出没する。高速道路を時速百四十キロで走るほどの優れた脚力を持ち、
「ほっといてくれよ」
「勝手だろ」
など、人語を喋る。この妖怪が生まれた理由としては、
「交通事故で亡くなった犬とその飼い主の霊」
「関東地方に住むと言われる、あるウイルスを持った犬に噛まれると人面犬になる」
「ある大学(筑波とも早稲田とも言われている)の遺伝子実験の失敗によって生まれた生物。白衣の研究員が必死になって探し回っていた」
など様々である。ちなみにバンダイが商標登録しているということでも有名な妖怪である。

人面犬の目撃談は、何も昭和に始まったわけではない。江戸時代の怪談随筆にも人面犬について書かれたものがある。その中でも「善悪報ばなし」に載っているこの話を紹介しよう。

●慶安年中の秋ごろ、西国美作の久米というところの山里に三人兄弟がいた。かれらは代わる代わるに母親の面倒を見ていたが、この三人、実に親不孝者で、親を養っても利益がないと思い、ある時三人で集まって、母を毒殺する相談をしていた。
そして兄二人が母に毒を盛ったが、母は運が強くて死なず、最後に末の弟が母を殺した。
三人が、
「ようやく願いがかなった。今日からはわずらわしいものは一人もいない」
などと喜んでいると、それから十日ほど経って、白昼に空が突然曇り、雷鳴が一回轟いて稲妻が光り、にわか雨がひどく降って目も眩む程だったが、その時、三人は頭だけ人間のまま、身体が動物となってしまった。
一人は牛となり、もう一人は犬となり、さらに一人は馬となり、三人は姿を隠さなかったので、人々が彼らの家に集まってその様を見物した。
そうして恥をさらすこと数ヶ月、終に三人は死んでしまったという。


親を大切にしなかったばかりに、その報いを受けたと言うわけだ。姿形は似ていても、江戸時代と現代ではその誕生理由が大きく異なる。

ちなみに、この人面犬の噂は、口裂け女ほどには大きくならなかった。それはおそらく、商業的力が働きすぎたためであろう。妖怪を妖怪として楽しめなかった故の非劇と言えなくもない。


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