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第五十四話:火車

解説:本来は死んだ人の魂を取りに来る車とされていたが、後に罪人を生きたまま引っ立てたり、死体そのものを奪いに来る妖怪として認識されるようになった。火車に取られた屍は、無惨にもその後引き裂かれ、木や岩に掛け置かれるという。魍魎とも同一視される(詳しくは第十一話参照)。「平仮名本・因果物語」に生きながら火車にとられた女の話があるので、ここに紹介しよう。

●河内の国(今の大阪府東部)の八尾という所の辺りに、弓削という在所があった。
或る日の夜更け方、八尾の庄屋が用事で平野海道を戻っていると、弓削の方から大きな松明を灯して来るものがある。
飛ぶように速く、それが通過する時、庄屋がとっさに見ると、なんとそれは松明ではなく大きな光であった。その中に、誰かは分からぬが、八尺程度の男二人が若い女房の両手を取って引いていくのが見えた。その光の影から見ると、若い女房は弓削の庄屋の女房であった。怪しみ、恐ろしいと感じながらも見送ると、それは段々遠ざかって行き、終に見えなくなった。
夜が明けてから人を遣わせて弓削の女房の様子を聞くと、この四、五日は病気で寝込んでいます、ということだった。そしてその三日後、その女房は死んでしまった。
この女房、日頃からその心は荒んでいて、人につらく当たって召使い、彼らに朝夕の食事も満足に与えないというので、悲観の者達も困り果てていた様だ。
生きながら地獄に落ちたというのは疑いない。これは最近の出来事である。


人間型の火車とは珍しい。しかも車らしいものを引いている訳ではなく、二人の男が自分の足で人間を攫って行くのである。火車の姿は牛頭馬頭、魍魎、或いは石燕の描いたような獣の姿をしたものが多いが、姿は違えどこれも火車なのであろう。


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