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第六十話:長壁姫

解説:「長壁は古城にすむ妖怪なり。姫路におさかべ赤手拭とは、童もよくしる所なり」(今昔画図続百鬼」

長壁は、播州姫路の白鷺城(姫路城)天守閣に住むと言われる老婆の妖怪。年に一度、城主の前に姿を現すという。また姫路城を守る老狐であるとも言われる。「今昔画図続百鬼」の中では、御簾から鉄漿(かね)をつけた顔を覗かせている老婆の姿で描かれているが、周りに配置された蝙蝠がいい雰囲気をかもし出している。
ここでは「諸国百物語」にある、播州姫路城の怪談を紹介しよう。


●播磨の国姫路城の城主秀勝は、ある夜の何もない時間に家来を集め、
「この城の天守閣に毎晩誰かが火を灯すのだが、誰でもいいからあれを見てくる者はおらぬか」
とお尋ねになったが、誰一人私が参りましょうという者がいない。
しかし、その中に十八歳になる一人の侍がいて、
「私が見て参りましょう」
と申した。城主は、
「それならば証拠となるものを持ってこさせよう」
と、堤燈をお渡しになり
「これに火を灯して来い」
と仰って侍を天守閣へ向かわせた。

侍が天守閣へ上ると、十二単を来た年齢十七八頃の女臈が火を灯し、一人でいらしたが、その侍を見て、
「お前はどうしてここへ来たのじゃ」
とお尋ねになった。侍は答えて、
「私は主人の仰せでここに来たのです。その日をこの堤燈に灯しては下さりませぬか」
というと、それを聞いた女臈は、
「主人の命令とあらば、火を取るのを許そう」
と、堤燈に火を下さったので、侍は嬉しく思って帰ったところ、城の三重目まで降りたところで火が消えてしまった。侍は引き返し、
「ついでのことですので、消えないように灯して頂きたい」
と言うと、女臈は別の蝋燭に取り替えて火を御灯しになった。また、これも証拠にせよと言って、櫛を片方下さった。侍は喜んで帰り、城主に堤燈を差し出すと、秀勝も立派なことだとお思いになった。そして堤燈の火を消そうとされたが、火は中々消えなかった。ところが侍が消そうとすると、火は消えた。
「他に不思議なことはなかったのか」
と殿様がお尋ねになったので、侍は例の櫛を取り出した。秀勝が手にとって見てみると、それは具足櫃に入れておいた櫛であった。城主は不思議にお思いになり、具足櫃を開けてみると、はたして一対で入れておいた櫛が、片方だけなくなっていたのである。

そしてそれから、城主ご自身が直接言って見ようと仰り、ただ一人天守閣にお上りになると、灯火ばかりあってなにもない。そうしてしばらくすると、そこに秀勝がいつも呼ぶ座頭が現れた。
「どうしてこんなところに来たのだ」
と座頭にお尋ねになると、
「殿が寂しくいらっしゃるだろうと思い参ったのですが、琴の爪箱の蓋が取れないのです」
と申した。秀勝がそれを聞き、
「こっちへよこせ。開けてやろう」
と、座頭から爪箱を取ったのだが、これが手にくっ付いてしまって離れなくなった。
「悔しい、騙されたか」
殿様はこう仰り、足で踏んで爪箱を割ろうとされたのだが、今度は足もくっついてしまった。
すると、先程の座頭は高さ一丈ほどの鬼神になり、こう言った。
「私はこの城の主じゃ。私をおろそかにして敬わないならば、今ここで引き裂いて殺してくれるわ」
流石の秀勝もこれには降参し謝ると、爪箱は離れ、しばらくして夜が明けた。天守閣だと思ったていたところは、いつもの御居間であったそうだ。


白鷺城に住む神も、殿の傲慢な心を許さなかったようだ。ここで現れた上臈や鬼神を即ち長壁と言い切ってしまうことは出来ないが、何かどうか関連があるに違いない。


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