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拾遺之三十二:提馬風

●歩いていた馬が突然倒れる現象。頽馬、ギバとも言い、『想山著聞奇集』『伽婢子』に詳しい。ここでは『伽婢子』の話を紹介する。


●尾張、美濃、駿河、遠江、三河には提馬風というものがあった。
里人が馬に乗り、また馬を引いて道をゆくと、旋風が起こって砂を巻き込み、丸くなって馬の前を立ち回る。それはあたかも車輪が転がっているようである。
旋風は徐徐に大きくなり、やがて馬の上を回るが、その時馬のたてがみがすくっと立って、そのたてがみの中へ細く赤い光が差し込む。すると、その馬は急に立ち上がっていななき、倒れて死んでしまう。風はその時に散り失せ、跡形もなくなる。何者の仕業であるのかは誰も知らない。
旋風が馬の上に来たときに、刀で馬の上をなぎ払いながら光明真言を唱えると、旋風は消えて馬にも何事もないという。これを提馬風という。


●『伽婢子』の作者・浅井了意は「かまいたち」との関連でこの話を書いているが、『伽婢子』は『剪燈新話』などの中国古典の翻案本である為、この話にも原拠がある。
また『伽婢子』では正体不明と書かれているのに対し、『想山著聞奇集』では玉蟲のような黄金の馬に乗った女の姿とされている。また物理学者で随筆家の寺田寅彦は、馬のたてがみが逆立つという点や、両者の話とも馬の上方に光の現象があることなどに着目し、この怪の正体を空中放電であるとしている。頽馬は、『伽婢子』に載っている対処法の他にも衣服で馬の頭を包んでやることによって防ぐことが出来るそうだが、この行為は電流が直接馬の身体へ流れるのを防ぐのだという。


(参考文献;柴田宵曲『妖異博物館』)
※寺田寅彦の説に関しては、『青空文庫』所収の『怪異考』を参考とさせていただいた。
青空文庫TOP(URL:http://www.aozora.gr.jp/)

寺田寅彦『怪異考』(URL:http://www.aozora.gr.jp/cards/000042/card2344.html)


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