第三十三話:あぎょうさん
解説:「学校の怪談」には、妖怪が謎をかけてくるというものが少なくない。あぎょうさんもそんな謎かけ妖怪の一つである。
●学校に潜む妖怪。
放課後、一人で学校に残っていると、天井から降ってきて背中に取り付くものがある。これが「あぎょうさん」である。そして、
「あぎょうさん、さぎょうご、いかに」
と訳の分からぬことを言ってくる。
実はこれ、あぎょうさんの出したなぞなぞである。ここでこのなぞなぞの答えが分かればあぎょうさんは去って行くが、もし分からなければ、あぎょうさんに噛み付かれるという。
また、こんな話もある。
●ある学校に、
「与田惣(よだそう)」
という名の妖怪が出没する。
放課後、一人で学校にいると、うしろから肩を叩くものがある。振り向くと、野球帽にマスクといういでたちの男が現れ、
「俺は与田惣だ」
と名乗り、持っている鎌を振り上げる。この時、あまりに突然のことにうろたえていると、与田惣は
「さかさまだ」
と変なことを言ってくる。実はこれこそ妖怪の謎かけである。この時、とっさに妖怪の正体を見破れば良いが、もし何も言わなければ、与田惣にさらわれてしまうという。
また、こんな話もある。
●ある学生が、偶然火事の現場に居合わせ、大火傷を負った。その学生は火事の起こる前、竜が火を吹いているのを目撃したと言う。
彼はこれを友人にも話した。すると、その友人も火を吹く竜を見て、家が火事になった。家の焼けた友人は、また別の友人に例の竜のことを話した。するとその友人も竜を目撃し、家が火事になったのである。
恐ろしいのはこれからだ。この話を聞くと、その竜が聞いた人のところに現れるという。もし竜の被害から逃れたい場合は、
「火竜そば、火竜そば」
と繰り返して言うと竜は去っていくという。
また、こんな話もある。
●あるところに綺麗な花が咲いていた。その花の名は、
「しなば草」
と言った。
しかし、その花を摘んだ者は皆死んでしまったという。
これは「しなば草」の謎が解けなかった為である。もしこの名前に隠されたある秘密が分かった場合、しなば草を摘んでも大丈夫だということである。
典型的な謎かけ怪談なので、答えの分かっている人にとってはくだらない以外の何でもないだろう。どうしても答えの分からない人は、下の名前の横のスペースを反転してみて欲しい。
「あぎょうさん」:ア行の三番目、サ行の五番目を続けて言って見ると・・・
「与田惣」:「よだそう」を反対から読むと・・・
「火竜そば」:かりゅうそばかりゅうそばかりうそばかりうそばかり・・・うそばかり
「しなば草」:「しなばそう」を反対から読むと・・・
どの妖怪も、謎を解かれると妖怪としての効力を失ってしまうのである。