第三十話:赤いはんてん

解説:混沌とする戦前の日本に於いて、赤いマントの怪人が人を殺し回ったり、子供を誘拐するという噂が広がった。この噂は後の口裂け女のように民衆に広まり、警察が出動、または噂を鎮圧する動きもあったという。

この話は江戸川乱歩の小説の登場人物の如き怪人の話だが、この「赤マント」に近い「赤いはんてん」の怪が学校の怪談として語られている。

●ある小学校の女子トイレにて、生徒が用を足しに入ると、
「赤いはんてん着せましょかぁ〜」
と何処からともなく聞こえてくるという。この声を聞いたという生徒が沢山現れたため、学校側は変質者の疑いもあるとして警察に連絡をした。
数日後、警察が学校に訪れた。問題のトイレには一人の婦警が入った。しばらくすると、
「赤いはんてん着せましょかぁ〜、着せましょかぁ〜」
と問題の声が聞こえてきた。婦警は、
「着せられるもんなら着せてみなさいよ」
と怒鳴った。しかし、
「きゃあああああああああああ」
外で待機していた他の警官は、婦警の悲鳴を聞いてあわてて女子トイレに入り、問題の個室を開けた。すると、そこには首を切られた婦警の無惨な姿があった。血が服にかかり、その様は赤いはんてんを着ているようだった。
【参考:「魔女の伝言板」(近藤雅樹他 著/白水社)、「学校の怪談大事典」(学校の怪談編集委員会 著/ポプラ社)】


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