第十九話:人魚

解説:「日本怪談集・妖怪篇(下)」(今野圓輔 著/中公文庫)によると、奄美大島にはチュンチライユと呼ばれる人面の魚がいたそうだ。これがいる時は大時化になると言われ、漁師はすぐさま船を帰港させたという。
人魚は推古天皇の時代にも現れたというから随分古い妖怪である。
西洋では綺麗な女性の上半身に魚の下半身という姿で描かれる人魚だが、日本の人魚は不気味な人面魚の姿で描かれることが多い。また、人魚の肉を食べると不老長寿になるとも言われ、これを食し八百歳まで生きたと言われる「八百比丘尼」の話も有名である。
人魚は時々漁師の網に引っかかったというが、これを殺すと後で恐ろしいことになるといわれ、もし網にかかってもすぐに逃がしてやったという。
なお、全国に人魚のミイラなるものが残って居るが、大抵は猿の上半身と魚の下半身を無理やりくっ付けただけの偽物らしく、またこのような珍獣の剥製は江戸時代大量に作られ、外国に多く輸出されたという。


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