第三十六話:塗仏

解説:正体不明の妖怪。
この妖怪は鳥山石燕の「画図百鬼夜行」他、それ以前に描かれた「化物づくし」などに描かれている妖怪である。また、「嬉遊笑覧」の「化物絵」にも「ぬりほとけ」という名が残っている。

鳥山石燕はこの妖怪を、仏壇からあらわれる全身真っ黒の、眼が飛び出た妖怪の姿で描いている。また、石燕以前の図巻(「化物づくし」など)に描かれている塗仏は魚のような尾を生やしている。魚の変化した妖怪なのだろうか。よくよく見ると鯰(なまず)にも見えなくはないが…。
また、この妖怪と関係があるのかは良く分からないが、僧をあざけって「塗坊主」などともいう(なまぐさ坊主と同義)。仏を馬鹿にして「塗仏」などと呼んだのだとしたら大層罰当たりなことだが、目を垂らして人を馬鹿にしているようなその姿は、十分にふざけたものだと言える。
ちなみに柳田國男の「妖怪談義」に「ヌリボウ」という妖怪の名が紹介されている。壱岐の妖怪で、夜間に路側の山から突き出す妖怪だということだ。

多田克己氏によれば、「目出度くなる」とは「往生する、死ぬ」という意味であり、よって身体が黒く、眼が飛び出たこの妖怪は死体を表すという。


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