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第三十七話:陰摩羅鬼

解説:「太平百物語」にこんな話が載っていた。
山城の国(今の京都南部)の西の京に、宅兵衛という者がいた。折りしも夏の日差しが耐え難い頃、宅兵衛は近くの寺に行って方丈の縁側に出てしばらく涼んでいると、とても心地が良くて眠たくなった。その時、かすかに何者かの声で、
「宅兵衛、宅兵衛」
と呼ぶ。宅兵衛は驚き、目覚め、起き上がって辺りを見回すと、驚いたことに鷺に似た奇妙な鳥がいた。その色は黒く、灯火が燃えているかのように目が爛々と光り、羽を振るって鳴くその声はまるで人間のようである。宅兵衛は恐れ、法縁を退いてその様子を窺うと、翼を広げて羽ばたいたと思った瞬間、頭から徐々に消えて、その怪鳥はいなくなってしまった。
宅兵衛は奇怪に思い、すぐさまこの寺の長老にその一部始終を語って怪鳥の正体を問いただした。すると長老は、
「この寺にいままで左様な化物は出なかった。そういえばこのごろ死人を送ってきたことがあり、その死体を仮に納めておいたが、おそらくそれではないか。新しい屍体の気が変じてそのような化物になり、これを陰魔羅鬼(おんもらき、原文ママ)と呼ぶということが蔵経の中にも書いてある」
とおっしゃったので、宅兵衛もそれを聞いて、
「そんなこともあるものでしょうか」
とますます奇妙に思った。


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