第二十一話:ピアスの白い糸
解説:有名な都市伝説なので聞いた方も多いことだろうが、一応ここでそのストーリーを紹介しよう。
どこにでもいるような一人の女性が居た。彼女は耳にピアスをしていた。
そんな或る日、女性はピアスの穴から白い糸が出ているのを発見した。
「なんだろう、これ?」
女性はその糸を引っ張って見た。すると、その糸は耳からするすると出てきた。更に引っ張る。糸は相変わらず出続ける。しかし、
(ぷつん!)
とうとう糸は切れた。そして、その途端女性の居る部屋の中が真っ暗になった。
「て、停電!?」
女性は蛍光灯のスイッチである紐を探した。そして天井から垂れ下がる紐を引っ張った。しかし明かりがつくことはなかった。
それもそのはずである。女性が耳から引き抜いた糸は、実は視神経だったのだ。彼女はそれを抜いたために失明してしまい、部屋の電気が消えたように見えたのも実は失明したためだったのである。
この話のバリエーションとしては糸が切れた拍子に目玉が反転してしまったりなど様々だが、中でもこの話の後日譚とも言えるこの話は紹介しておかなくてはなるまい。
その後、東京渋谷で奇怪な女の噂が囁かれた。
その女はピアスをしている人の元へ行き、
「ピアスしてる?」
と聞いてくる。もしも
「してる」
と答えると、その人の耳を食いちぎってしまうというのだ。言うまでもなく、この女はかつてピアスの白い糸を引き抜いて失明した女性であり、以後この女は「耳かじり女」と呼ばれ、都市伝説の妖怪達の仲間入りを果たした。
実際耳たぶに視神経の如き重要な神経が通っていることなどありえない。また、いつか見たテレビ番組(何と言うタイトルだったかは忘れた)によれば、ピアスの白い糸の正体はピアスの穴を開けた後、保護のためにその穴壁を覆った薄い皮であるという。この皮がピアスを抜く際、一緒に出てきてしまうのだそうだ。同番組では実際の映像も紹介されていた。
この薄皮の存在と、耳に穴を開けることへの人々の不安感が巧く混ざり合って生まれた話だろうか?
【参考:「ピアスの白い糸」(常光徹他 著/白水社)】