第三十五話:テケテケ
解説:上半身だけの妖怪。両手に鎌と大鋏を持って現れることもある。肘を地面につきながら追いかけてくるものもあるし、上半身だけで飛んでくることもある(上半身だけで飛んでくる場合、聞こえるはずのない足音が聞こえてくることが多く、その足音が「てけてけ」と聞こえるためにこの名が付いたとも考えられる)。いずれにしてもかなり速く、追いつかれると下半身を切り取られたり、さらわれたりといいことはない。
また、テケテケには「パタパタ」「コトコト」などの別称があり、更に亜種として「ひじかけババア」「ひじ子さん」などがある。
次に紹介するのはそんな「テケテケ」の一種だと思われる妖怪譚である。
ある中学にて放課後、一人の男子生徒が部活を終えて帰宅をするところであった。その時ふと校舎に目をやると、三階の教室の窓のところに一人の見慣れぬ女生徒がいて、腕を組んで遠くを見ていた。女生徒はなかなかの美人であったため、男子生徒が暫く見惚れていると、その女生徒も彼の視線に気付いたらしく、彼の方を見て微笑んできた。
男子生徒も釣られて思わず微笑み返したが、彼の微笑みは次の瞬間氷りついた。
何とその女生徒が窓からこちらへ飛んできたのである。しかも下半身がなかった。彼は全速力で逃げたが、暫くして後ろを振り返ると、彼女はもういなかったという。
【参考:「ピアスの白い糸」(池田香代子他 著/白水社)、「学校の怪談大事典」(学校の怪談編集委員会 著/ポプラ社)】