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第三十三話:化物屋敷

解説:英国には幽霊屋敷というものが数多くあり、観光ツアーにもその手のいわくつき物件めぐりがあるそうだ。
我が国でも昔からお化け屋敷の話は良く語られてきた。最近でもそれは留まることを知らず、全国の心霊スポットを紹介した本が数多く出版されている。傾向は違えど、英国人も日本人もお化け好きなのには変わりない。
ここでは、江戸時代の怪談集「宿直草」に見られる、ちょっと変な化物寺の話を紹介しよう。

●昔、智も行も兼ね備えた或る僧が諸国を旅しているとき、見かけが立派だが住職のない寺を見つけた。庭は草がぼうぼうで、床には蜘蛛の巣が散乱していた。僧が近くの家の者にこの寺について尋ねてみたところ、今まで何人か僧が来たが、皆翌朝には居なくなってしまうので化物が居るのかもしれないと話していたとのことだった。僧はこれを聞き、皆が止めるのを再三頼み込んで、ようやくその寺に住むことを許された。
日暮れ時になって、仏前を整えているうちに夜中になった。すると庫裏に丈が一丈程の光る物体が見えた。僧が何だろうと思っていると、外から、
「椿の木はいらっしゃるか」
と声がする。光っているものが、
「誰だ」
と言うと、
「東の野に住む狐だ」
と答え、壁の壊れている隙間から五尺ほどの、その眼日や月のような怪物が火を灯して入ってきた。再び、
「誰だ」
と呼ぶと今度は、
「南の池の鯉だ」
と名乗って、七八尺の、目は黄金色、身体には白銀の鎧を纏った異類のものが現れた。
再び呼ぶ。すると、
「西の竹林の一本足の鶏だ」
と名乗って、朱色の兜、紫の鎧を纏い、左右には翼を有す、六尺ほどの天狗もこうであろうかと思わせるほどに恐ろしいものが来た。
また案内を請うと、
「北の山の狸だ」
と答えて、色が見分けにくい四尺ほどのものが来た。どれも怪しいものばかりである。
化物達は僧を囲み、騒ぎ立てて脅かしたが、僧は怖れることなく魔も仏も元は一つのものと思って般若心経を唱えると、怪物共は仕方なく去っていった。そうこうしているうちに朝が来た。すると檀家の連中が五六人寺に訪れた。
僧が夜の一部始終を彼らに語り、化物自らが喋ったことを頼りに化物を探し出して退治することとなった。探索の結果、寺の外では昨日の化物共と思しき狐、鯉、鶏、狸を見つけたので全て殺した。
残るは椿の化物であるが、年輩の或る人が寺の北西の隅の柱が椿であるということを教えてくれたので、大工を呼んで来てその柱を他のものと取り替えてもらった。
その後怪物が現れることはなくなり、寺は栄えたという。

それぞれの怪物が個性的で、私としてはなかなか好きな話である。


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