【妖怪作品】
■高野聖・眉かくしの霊
泉鏡花/作、岩波書店
●高野聖の身に起こった不気味な妖怪譚「高野聖」他、綺麗さの漂う幽霊譚「眉かくしの霊」を収めた、鏡花の怪異作品集。
私がこの話を最初に読んだのは、大学受験も迫る高校三年生の時ですが、当時、鏡花の用うる難しい語句に圧倒されつつも、こんな怪談小説が日本にあったのか、と大いに驚かされました。この後、鏡花の他の作品を読んで、どんどん鏡花世界にのめりこんでゆくのですが、この本はある意味記念すべき作品ではあります。
■芥川龍之介 妖怪文学館
芥川龍之介/作、東雅夫/編、学研
●その特異さ故、今まで復刻に恵まれなかった伝奇の名作を復刻するという、学研M文庫のシリーズ「伝奇ノ匣」の第三弾。この回では文豪・芥川龍之介の怪奇幻想小説家としての一面を垣間見ることが出来ます。
「羅生門」など、その作品が教科書に載ることも多い芥川ですが、こんな作品も書いていたのか!という、私にとっては驚きの発見があまたある作品集でした。
とりわけ、芥川が蒐集した怪異帖「椒図志異」や、柳田國男、泉鏡花らとの怪談会の記録は妖怪、怪談愛好家にとっては貴重な資料となるでしょう。
■椿説弓張月
曲亭馬琴/作、岩波書店
●保元の乱の後、崇徳側についた人々の悲しき顛末は「妖魅百物語」の第五話や、「雨月物語」の「白峰」の現代語訳の頁に載せてありますが、本書の主人公である鎮西八郎為朝も、崇徳側に付き、島流しに遭い、後に討伐された人物です。しかし、曲亭馬琴はこの非劇のヒーローを生かし、琉球国の内乱を鎮めた人物として描きました。
歴史小説としても読めますが、怪しげな生き物や人物が大勢登場し、壮大な伝奇浪漫としても楽しめる作品です。特に崇徳院の眷属でもある天狗らが、為朝を荒れ狂う海から救い出す場面は、歌川国芳の浮世絵にも描かれたほどの名場面です。
■岡本綺堂集〜青蛙堂鬼談
岡本綺堂/作、日下三蔵/編、筑摩書房
●日下三蔵氏編集の名シリーズ「怪奇探偵小説傑作選」(全五巻、この後に「怪奇探偵小説名作選」が続く)の記念すべき第一巻。
探偵小説と銘打っているものの、この巻では怪談の名手・岡本綺堂の書いた怪談小説の数々を読むことが出来ます。
サブタイトルにもなっているシリーズ「青蛙堂鬼談」他、綺堂の名文により磨きがかけられた高級な怪異譚数編を楽しむことが出来ます。私としては、「白髪鬼」などが特にお薦めです。
■冥途・旅順入城式
内田百閨^作、岩波書店
●夏目漱石の弟子である内田百閨i百鬼園先生)の、夢のような作品集。
「冥途」には、予言獣「クダン」の苦悩を描いた、其の名もズバリ「件」という短篇が収録されています。予言の出来ない件が慌てふためく様は、不気味というよりむしろ笑えます。
■書物の王国18 妖怪
東雅夫・須永朝彦/編、国書刊行会
●幻想文学を数多く収録した叢書「書物の王国」の妖怪編。この巻では、妖怪にまつわる古今東西の小説、随筆、歌などを読むことが出来ます。
特に、山人の髑髏を廻る怪談譚の「くろん坊」は、怪談小説としては超一級品。
収録作品;
- 妖怪さま(水木しげる)
- 日本の幽霊譚(ラング/作、不破有理/訳)
- 稲生物怪録(平田篤胤/編、須永朝彦/訳)
- エプワ―ス牧師館の怪(イングラム/作、平井呈一/訳)
- ランプの廻転(澁澤龍彦)
- マリウェックの墓地(ジャン・レイ/作、森茂太郎/訳)
- なくした部屋(オブライエン/作、南條竹則/訳)
- 廃寺の化物(「宿直草」より 須永朝彦/訳)
- 杵の怪(「捜神記」より 竹田晃/訳)
- 付喪神(須永朝彦/編)
- だれが知ろう?(モーパッサン/作、榊原晃三/訳)
- 父の気がかり(カフカ/作、池内紀/訳)
- 器怪の祝祭日(種村季弘)
- 近世妖怪歌謡(須永朝彦/編)
- 夜と夜の蠱惑(ベルトラン/作、城左門/訳)
- くろん坊(岡本綺堂)
- 恐怖の山(E.F.ベンスン/作、鈴木克昌/訳)
- カッパのクー(アイルランド伝説、片山広子/訳)
- 人魚(火野葦平)
- 狼男の話(「サテュリコン」より 国原吉之助/訳)
- 鍛冶の母(田中貢太郎)
- ダイダラ坊の足跡(柳田國男)
- 山のごとく歩む(ウェルマン/作、深町眞理子/訳)
- 流刑の神々(ハイネ/作、小澤俊夫/訳)
- 雪女の話(高崎正秀)
■怪談牡丹燈籠
三遊亭円朝/作、岩波書店
●円朝の語った「怪談牡丹燈籠」の速記本。
新三郎の元に通いつめる幽霊・お露の物語、ではありますが、「伽婢子」や「牡丹灯記」を下敷きにしたと思しきお露と新三郎の物語は作品の途中であっさりと終わり、あとは露の父である平左衛門の奉公人・孝助が、主の仇討ちをする物語となります。読み難い漢字が沢山出てきますが、本来は円朝の高坐の話なので説明文より登場人物の会話の比重の方が大きく、漢字の難しさも左程苦にならずに読めます。怪談性はゼロですが、これはこれで面白いと思います。
■うつろ舟
澁澤龍彦/作、河出書房新社
●古典より題材を得た、幻想小説八篇収録の作品集。
当サイトでも紹介した「うつろ舟」他、澁澤宇宙的作品満載の本です。澁澤の小説は、エッセイほど有名ではありませんが、私としては好きな部類の小説ばかりです。
■魍魎の匣
京極夏彦/作、講談社
●今や妖怪小説と言えば京極夏彦氏ですが、本書はそんな京極氏の「京極堂シリーズ」第二弾。
バラバラ殺人、箱のような研究所、箱をテーマにした幻想小説、と、始めから終わりまで「箱づくし」の探偵小説です。毎度御馴染み京極堂の妖怪薀蓄、衝撃的なラストはかなり読み応えありです。
■世にもふしぎな物語
那須正幹/作、小林敏也/絵、講談社
●常光徹氏の「学校の怪談」シリーズと同じ、「KK文庫」から出ていた児童向け怪奇小説集。作者はなんと、「ズッコケ三人組」シリーズで有名な那須正幹氏。
本書を読めば分かる人は分かると思いますが、実はこれ、秋成の「雨月物語」の翻案小説です。雨月全九篇のうち、「白峰」、「菊花の約」、「浅茅が宿」、「夢応の鯉魚」、「蛇性の婬」、「青頭巾」が翻案されています。
最近読み返して見ましたが、今読んでもかなり面白い作品集です。特に「青頭巾」を翻案した「鬼」と、「夢応の鯉魚」を翻案した「げんごろうぶな」は超一級の怪奇小説です。現在絶版なのが惜しまれます。
収録作品;
- 約束
- 鬼
- やけあと
- へびの目
- げんごろうぶな