第二十七話:髪切り

解説:江戸時代、度々女の髪が切られることがあった。
「耳嚢」によると、
●世間では女の髪を根元から切る事件が度々あるが、これを髪切りといって、怪談の一つとされている。恋人のいる女が親親類の持ってきた縁談を嫌い、この怪談にかこつけて髪を切ることも多いというが、本当に狐狸の仕業に拠る場合もあるそうだ。
松平京兆の在所で髪を切られた女が三人いたが、その頃野狐を捕らえたので殺して腹を割くと、腸の中に女の髻が二束まであったということだ。一様に論ずべきことではないだろうか。

「耳嚢」では狐狸の仕業としているが、「髪切り」という名の妖怪は「化物づくし」などに描かれている。また、鳥山石燕の「画図百鬼夜行」では、「髪切り」のデザインに良く似た妖怪が「網剪」という名で描かれている。

ちなみに、澁澤龍彦の「うつろ舟」という短編集に、その名もずばり「髪切り」という話が収録されているので、是非読んで頂きたい。


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