酒呑童子


第三話:酒呑童子

解説:「大江山 いくのの道の遠ければ まだふみもみず 天の橋立」(小式部内侍)


時は平安、一条天皇の時代。
其の頃、都では謎の婦女行方不明事件が多発していた。事態を重く見た天皇は、都一の陰陽師・安倍晴明に事件の解明を依頼した。晴明は、都より西北の方角、丹波の国大江山に住む鬼が行方不明事件に関係していると言った。
公卿達は源頼光と丹後守藤原保昌に鬼の討伐を命じた。頼光は渡辺綱、坂田公時、碓井貞通、卜部季武の四天王を連れて大江山へ向かった。

しかし、鬼の所在は全く分からなかった。
そうこうしてしばらくの間彷徨っているうちに、頼光達は一つの洞を見つけた。洞の中には老翁、老山伏、老僧、若僧がいたのだが、彼等四人は皆、鬼によって身内や供を失った者達であった。
彼等は酒で頼光達をもてなした。そして酒食を摂りながらも、彼らは鬼退治の相談を始めたのである。四人は頼光達の格好が目立つので、山伏姿に変装して行くとよい、と助言した。

四人に見送られ、一行は山伏姿で鬼を探した。すると、川辺で血のついた衣を洗う一人の老女に出会った。実は老女は鬼に攫われて来た者の一人であったが、身分賤しく筋が固くて食べられないと言われ、今まで鬼達の洗濯女として二百年もの間ここで暮らしてきたという。
一行は老女から鬼隠しの里の話を聞き、山伏姿で見事鬼の城へ潜入することが出来た。

鬼王は童子の姿をしていた。
鬼は一行の訪問を嬉しがり、自分の身の上話などを語るなど上機嫌であった。そこで頼光一行が洞の中の四人から貰った酒を鬼に飲ませ酔わせると、童子は眠くなったといって自分の部屋へと戻っていった。

この好機を逃す手はない。
頼光達は変装を解くと、鎧兜で鬼の首を討ち取ろうと童子の部屋へ入っていた。
頼光達はそこで恐ろしいものを見た。そこにはおぞましい鬼の姿になった童子が寝ていたのである。
頼光が一気に鬼の首を落とす。すると恐ろしい事に鬼の首は宙高く舞い上がり、頼光の頭に被りついた。鬼の牙は頼光の頭に至らなかったものの、兜に噛み付いていて離れなかった。
しかし酒呑童子の命運は最早尽きていた。鬼は目玉を刳り抜かれ、とうとう力尽きたのであった。


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