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拾遺之五:お父さんの背中

●仲の良い夫婦がいた。
その夫婦には一人の息子があった。三人はよそから見たら、羨ましいほどに仲が良く、いつも幸せそうだった。

しかしいつ頃からだろう。夫婦の仲に皹が入り始めたのは。
二人は毎日喧嘩をするようになり、近所の人は毎晩、夫婦の言い争う声と子供の泣き声を聞いた。その喧嘩は、日を経る毎に激しさを増した。

ところが、或る夜を境に喧嘩の音はぴたりと止んだ。息子も泣かなくなった。不思議なことに、其の日以来母親の姿を見たものはいなかった。

そんな或る日のこと、父親は、家で息子とご飯を食べていた。
「ねえ、」
「何だい?ぼうや」
「どうしてこのおうち変なにおいがするの?」
「なあに、梅雨だからカビが生えてるんだろう」
息子は怪訝そうな目で父親を見る。父親はそれを知ってか知らずか、目を床の方に反らした。
「ねえ、おかあさんはご飯食べないの?」
再び息子が尋ねる。
「お母さんは大事な仕事があって出かけてるんだ。お父さん達とご飯は食べられないのさ」
「ふーん、それじゃあさあ・・・」
「何だい、ぼうや」



「何でおとうさんは、いつもおかあさんを背負ってるの?」



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