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拾遺之六:タクシー幽霊

●アメリカでは「消えるヒッチハイカー」という名で有名な、典型的都市伝説。

●或る夜、タクシーは墓地の前で若い女性を拾った。
真夜中、こんな場所に女性がいるなんて・・・運転手は不気味に思ったが、タクシーは女性を乗せて走り出した。
「どちらまで?」
運転手が聞くと、
「●●までお願いします」
女性は行き先を告げた。

やがてタクシーは女性の家に到着した。
「あの、私お金を持ってませんので、すぐに取ってきます」
女性はそう言うと、家の中へ入っていった。しかしいつまで経っても出てこない。可笑しいと思った運転手は、タクシーから降りると家のチャイムを押した。
「はーい」
中から出てきたのは先ほどの若い女性とは違う、初老の女性だった。
「あのー、タクシーの料金、まだ払ってもらってないんですが」
「え、タクシー?うちの家族でタクシーを使った者はおりませんが」
「きっとお宅の娘さんでしょう。若い女性の方でしたよ」
「娘・・・あっ!」
女性は思いついたようにそう叫ぶと、運転手を家の中へ招き、仏壇の前に座らせた。
「私の、娘です」
女性は手で仏壇の遺影を指しながら、運転手に説明した。
「あっ、この娘さんは!」
仏壇には、一枚の遺影が飾られていた。額に入ったその遺影の人物は、先ほど運転手が乗せてきたはずの、あの女性だった。


現代の話として有名なこ上の怪談だが、実は江戸時代の百物語本「諸国百物語」で、既にその原型が出来上がっている。

●昔、熊本主理という残虐な男がいた。
主理が城に仕えている時、その飯の中に針が入っているということがあった。主理は怒り、きくという名の下女を呼びつけて言った。
「誰に頼まれた、言わぬか、言わねば拷問してでも吐かせるぞ」
きくは言った。
「それはどうしようもない事で御座います。着物を縫っていてその針を髪に挿しておいたのですが、それが御飯の中へ落ちてしまったのです。心からそうしようと思ったことでなく、また他の人に頼まれたことでも御座いません。偶然の過ちで御座います故、どうかお許し下さいませ」
主理はそれを聞いて、
「私の命令が聞けぬと申すか、さらば責めて問うまでよ」
主理はきくに、水責め、鉄棒ひしぎ、木馬責め、こぼく責め、と様々な拷問を行った。更には背中を断ち切り、切り口へ煮立てた醤油を注ぎ込んだが、きくはただ、
「最初に申し上げたとおりで御座います。御慈悲に、早く御暇を下され」
と言うのみ。
主理は責めが足りぬと言い、百姓に穴を掘らせてきくを入れ、そこにニ、三千もの蛇を放ってきくを責めた。きくは言った。
「私の命も尽きるでしょう。どうか私の母を呼んで、最後の別れをさせて下さい」
仲間は不憫に重い、きくの母を呼んだ。母はきくを見て、泣きながらlこう言った。
「武家に宮仕えさせる以上は覚悟のことだったが、こんなひどい責め様などあってはならぬ。お前が死んだら怨霊となって戻り、この恨みを晴らすのじゃ。決して忘れてはならぬぞ」
きくも言う。
「ご安心下さい。この恨み、主理のみならず、七代まで。もし疑っておられるならば、私が死んだ後胡麻を蒔いて下さい。三日で芽が出、是が証拠となるでしょう。それではさようなら」
それだけ言うと、きくは舌を噛み切って死んだ。
きくの母が胡麻を蒔くと、三日で双葉が出てきくの言った通りとなった。そして主理の元にはきくが現れ、恨みの数々を申し渡してから、また来ると言った。それから主理は、自分の行った悪業の数々を述べ、気違いのようになり、七日目に死んだ。それからも、きくは主理の子孫を取り殺していった。

 さて、主理の四代目の子孫は松平下総守殿に奉公し、播磨の姫路にいた。或る日、主理の屋敷から二里離れたところに一人の女がいて、馬子に馬を借りようとしていた。馬子は日も遅く、帰りも遠いと言って馬を貸すのを拒んだが、女が割り増し料をとらそうと言ったために馬を貸すことにした。
屋敷に着くと、女は馬から下りて中へ入っていった。
馬子は女が行ってから、屋敷の者に言った。
「駄賃を下され」
しかし、屋敷の者は駄賃をくれようとはしない。
「何をいう、馬を頼んだものなどないぞ」
「たった今女を乗せてきた所です。駄賃は頂きますよ」
馬子と奉公人が言い争っていると、どこからともなく、
「いつものきくが乗って来たのだ。駄賃百六十文払え」
という。主理の家老がそれを聞いて、銭を払った。
それから主理は患い出し、きくの恨みをいろいろと口走った後、七日目に死んだという。四代の間に祈祷、祈りなどいろいろ行って見たが、効果はなく、跡目相続のある時にはきくが現れ、主理の名を継ぐ者を取り殺したという。


●この話はタクシー幽霊の先駆的怪談であると同時に、あの「皿屋敷」の類話となっているところも興味深い。


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