「妖魅百物語 隠ノ巻」
第???話:白沢
「黄帝東巡し、白澤一たび見る。怪を避け害を除き、靡くところ(彳に扁の字)せず。摸捫窩賛(今昔百鬼拾遺)」
●白沢は古代中国の地理書「山海経」にもその名が見える霊獣である。
病魔の害を防ぐと云われていて、人語を解し、代々徳の高い皇帝の前に現われたという。
例えば、白沢は古代中国の黄帝の前に姿を現したことがあったそうだ。白沢は自然界の様々なことを知っており、それを黄帝に話して聞かせた。その話の中には一万以上にも上る、膨大な種類の妖怪や精に関する事柄も含まれており、黄帝は白沢から聞いた話に基づき或る書物を作らせた。それが最古の妖怪図鑑として名高い「白沢図」である。
「白沢図」にはその妖怪の特徴と対処法が書かれていて、そのおかげで古代中国の民は妖怪の害に遭わなくなったという。「白沢図」自体は現在伝わっていない幻の書であるが、その内容の一部は各書物に載っており、例えば「一宵話」の肉人の話で語られていた「封(ほう)」も、元々「白沢図」に載っているとされていた(詳しくはこちら)。
日本にも白沢の事は伝わった。
江戸時代には旅のお守りやコレラ除けの護符として、白沢の画が描かれた刷り物が作られた。護符に描かれている白沢は人面で、少し気味が悪い。件(くだん。未来を予言するという人面牛)とも混同されたという。
また、日光東照宮の拝殿にも白沢が描かれているが、最近まで獏だと思われていたという悲しいエピソードもある。
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