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拾遺之八:うぐめ


●『諸国百物語』にこんな話がある。


●寛永元年のころ、京の東に「の林」と呼ばれる墓地があった。ここへ夜な夜な「うぐめ」の化け物が来て赤子の声で啼くというので、日暮れに通る者はなく、このあたりの家では皆背戸、門をを固めて人の出入りがなかった。
そこで或る人が「私が見届けよう」と、或る豪雨の晩にの林へ行って、うぐめが来るのを待ち構えていた。すると案の定、五つ時分(午後八時ごろ)になって、白川の方から唐傘ほどの青い火が飛んできた。それが近づいてくると、聞くのに違わず、赤子の声が聞こえてきた。男は刀を抜き、化け物に飛び掛って斬り付けた。そしてどっと落ちたところを続けざまに二回刺し、
「化け物しとめたり、出あえ出あえ!」
と叫ぶと、近所の者が松明を灯してやってきた。そして近くに寄り、うぐめの化け物の亡骸を見ると・・・


大きな五位鷺だった。

人々は、今までこんなものに怯えていたのか、と大笑いしながら帰っていった。



●九州地方で言う「うぐめ」とは、船に憑いて悪さをする正体不明の魔物のことだが、ここでいう「うぐめ」は既に紹介した産女のことである。

文章からも分かるように、この話は怪談ではなく、千千古の話同様笑い話として書かれている、がしかし、この話に登場した人々のように、この話を笑って済ませられない箇所がある。そう、五位鷺が青く光っていたのは何だったのだろう?
鳥山石燕も桃山人も、自著の中で鷺の光について取り上げている。例えば石燕の『今昔画図続百鬼』ではこんな説明がある。
青鷺の年を経しは夜飛ぶときはかならず其羽ひかるものなり。目の光に映じ嘴とがりてすさまじきと也。
同書では、木に止まって光る鷺の画が描かれているが、『桃山人夜話』でもほぼ同様の構図で描かれている。画の横にある解説にはこうある。
此鷺五位のくらゐをさづかりし故にや。夜は光ありてあたりを照せり。
科学的に、青鷺が光ることなど有り得るのだろうか。
蛍の研究で名高い科学者・神田左京は、自著『不知火・人魂・狐火』の中で、鳥の光に対して二つの説を挙げている。一つは羽に光があたり、その反射光が見えたのだろうという説。もう一つは発光バクテリアを帯びた魚を掴んで、青鷺が飛んでいたのではないかという説である。ここで、話の舞台となったのは寛永元年の雨の夜である為、前者であるとは考えにくい。
それでは発光バクテリアはどうか。発光バクテリアは腐敗する前の海水魚の上で繁殖するという。アオサギは魚をとるし、また発光バクテリアの光も青白いものである。これらのことを考えると、『諸国百物語』に見えるこの青鷺の光も発光バクテリアで説明できるのかも知れない。




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